
「ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note- 特別編」は2021年に制作された、文字通りの特別編で53分の1話完結のエピソード。タイトルは「ウェイバーと同窓会と幻灯機 / Therein lay all the answers as to why you chose me.」。テレビシリーズの前半はロード・エルメロイU世の日常をオリジナルエピソードで描いているが、この特別編も同様に日常のエピソードで「魔眼蒐集列車」よりある意味面白い。
原作は三田誠・TYPE-MOON、キャラクター原案は坂本みねぢ、監督は加藤誠、脚本に小太刀右京、キャラクターデザインに中井準、スーパーバイザーにあおきえい、CGディレクターに井口光隆、編集に右山章太、音響制作にマジックカプセル、音楽に梶浦由記、制作はTROYCA。全53分。
★ストーリー
クリスマスも近いある日、仕事を終えたロード・エルメロイU世(ウェイバー)はグレイとオルガマリーと歓談中にかつてのエルメロイ教室の仲間アムレス・ヴォータンとカミュ・ペリゴールに再会する。カミュは父の形見のフィルムカメラで自身とウェイバーとグレイの3人で写真を撮る。そこからが事件の始まり。ウェイバーがロンドンを離れて聖杯戦争に参加している間に起こった様々な事件とそこに絡む人々の思いがとんでもない方向に事件を曲げていく。
ウェイバーの元に、時計塔経由でエルメロイ教室の同窓会の知らせが届く。ところがその開催日を前にして突如ウェイバーは10年まえのウェイバー・ベルベットの姿に戻ってしまう。物語の中盤でウェイバーは事件のからくりを殆ど解いていたが、物語の中で謎解きはしない。ここの件はウェイバーが弟子たちを招集しておきながら何も語られていないところからも分かる。そして同窓会当日、義妹・ライネス・エルメロイ・アーチゾルテと共に会場に乗り込んで謎を順番に解いていく。エルメロイU世は単なる復讐劇かと思っていたが、どんどん焦点は別のところへズレていき、トラブルメーカーと呼ばれた蒼崎橙子が登場して予想もしていなかったところへ帰結していく。
物語のバックボーンに走っているのは、同級生カミュがウェイバーに好意を寄せていたことによる。カミュがウェイバーに渡した写真は封筒に入ったまま10年の歳月が流れていた。ウェイバーの写真を撮るカミュ。懸命に論文を書くウェイバーにサンドイッチを差し入れるカミュ。それを見てロード・エルメロイU世は自分の過去の失敗に気づく。カミュはそんなウェイバーを眺めながら永遠に時を過ごそうとしていた。弟子たちの協力で召還したグレイの限定解除により幻術を根底から破壊して事件は解決する。
カミュとの別れ際、ウェイバーは「玉子サンドおいしかったよ〜」と叫び、振り返ったカミュはカメラを構えるがシャッターは押さなかった。シャッターを押さないことで全ての思いを断ち切った瞬間だったと思う。
