2005年04月01日

双璧

 「銀河英雄伝説」の双璧、ロイエンタールとミッターマイヤーについては僕などが語らなくても、銀英伝のファン、ロイエンタールファン、ミッターマイヤーファンに語り尽くされているので書くまでもないのだが、かと言って避けていくにはあまりに大きな穴を開けてしまいそう。ということで二人いっしょに感じた所を。
 ウォルフガング・ミッターマイヤーは平民出身。自ら選んで軍人の道を歩む。迅速な用兵で「疾風ウォルフ」の異名を持つ。第4次ティアマト会戦ではヤンの揺動作戦に気づいたラインハルトがミッターマイヤー少将を呼び出し無人艦の追撃を命じるが、既にミッターマイヤーは高速戦艦を向かわせていた。余りの迅速さに帝国艦隊とミッターマイヤー艦隊が交錯する場面も。頑固な規律主義者であり、フェザーンを急襲した際、部下には略奪・暴行を固く禁じていた。実際には部下の中に略奪者・暴行者が出て公開で銃殺刑に処している。このこだわりがかつて身を危険にしラインハルトとの出会いにつながっている。しかし、こういう頑なこだわりを持つ男は魅力的だ。
 ラインハルトと出会う前、ミッターマイヤーが処罰した兵士の中に貴族の子息がいたために平民出身の彼は貴族の圧力によって投獄される。ロイエンタールは親友を救うためにハインハルトに会い、ミッターマイヤーの救出を願い、以後の忠誠を誓う。
 オスカー・フォン・ロイエンタール。青い左目と黒い右目を持つ冷やかな容貌の男。父は下級貴族、母は伯爵家令嬢。白兵戦では帝国屈指の腕前を持つ。軍人としては柔軟な用兵、統治官としては緻密で用意周到な手腕を見せた。青い目の母と黒い目の愛人との間に生まれた子という運命から「女は男を裏切るために生まれた」というのが信念で、捨てた女性も多いとか。リヒテンラーデ侯爵の一族エルフリーデとの間に子供を設けるが、それが「ロイエンタールに謀叛の動きあり」の疑惑のひとつとなった。ロイエンタール討伐を終えたミッターマイヤーは親友の忘れ形見をフェリックスと名付けて育てる。
 こうして書いていると涙を誘いますね。決して神様のいたずらではなく、歴史のいたずらによって戦った二人の友情は最後まで崩れることはなかった。万人好みの好青年のミッターマイヤーだが、僕は二人の内どちらが好きかと問われればロイエンタールだな。ミッターマイヤーは軍人としては同等の実力だが、その他の実力を見ればロイエンタールの方が遥かに上だと評価できるのでは。
 ロイエンタールがハイネセンへの撤退中にグリルパルツァーの裏切りに合い、乗艦を攻撃され負傷。重症ながらも寝台に着かず艦橋で指揮を執った姿は死を覚悟した最後の勇姿だった。グリルパルツァーをミッターマイヤーが許さなかったのは言うまでもない。ロイエンタールはハイネセンへ戻りラインハルトを侮辱したトリューニヒトを銃殺、ミッターマイヤーを待つ。「早く来い、疾風ウォルフの名が泣くぞ」。いかに混乱していた中であっても執務室までエルフリーデと子供が入るには手引きした人間がいるわけだ。ある意味で人間社会はこわい。
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2005年03月31日

ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ

 メルカッツは「銀河英雄伝説」帝国軍の名将、上級大将。数々の功績をあげてきた名将ではあった。アスターテ会戦ではラインハルト軍の配下として参戦、自軍の倍の同盟軍の侵攻に対し、ラインハルトにいかにして戦うつもりであるかを問うている。不安にかられる他の提督と気持ちは同様であったが、年下のラインハルトに対しても上官であるという姿勢は崩さず、またラインハルトに対して一切悪口はついていない。このあたりからも人柄がうかがえる。
 ラインハルトは「撤退など思いもよらぬことだ。われわれが敵より圧倒的に有利な態勢にあるからだ」と各個撃破の作戦を説明する。ヤンのせいで完全なる勝利にはならなかったが敵の2/3の艦隊を沈めた戦いにラインハルトの実力を早くから認めたのもメルカッツだった。
 リップシュタット戦役では門閥貴族連合軍司令官に就く。この任を心ならずも受けているが、この後が歴史に弄ばれた感が強い。眼を閉じて深く考える表情は物静かなのだが、リップシュタット戦役で副官シュナイダー自決を妨げられ、家族も伴わず同盟へ亡命する。ラインハルトもメルカッツを戦役後に抑えられなかったことを悔やんでいる。帝国幼帝ヨーゼフ二世が誘拐され同盟領内で銀河帝国正統政府が樹立され、その際メルカッツは軍務尚書かつ元帥に就いている。さらにヤンから「動くシャーウッドの森」を率いることを頼まれ受諾している。流転の人生を活きた男。最後まで帝国軍服は脱がず、同盟の主要キャラクターであるにもかかわらず、帝国・同盟どちらのポスターにも載っていない中途半端な存在。
 ヨブ・トリューニヒトは陰険な悪徳政治家でその悪徳故にロイエンタールに丸腰のまま銃殺されたが、それもそれなりの人生。ところがメルカッツはいけません。僕には納得のいかない人生だ。彼は帝国に残ってラインハルト麾下であればその軍歴、能力も有効に使えたものを。(先にあげたサイトの著者の意見には賛成しかねます)
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2005年03月29日

ナイトハルト・ミュラー

 ミュラーはラインハルト麾下の将官ではキルヒアイスに次ぐ若さ、青ねずの髪の青年。以前ご紹介したようにラインハルト中佐時代のエピソード「奪還者」ではフェザーンの駐留武官としてハインハルトを助けた。
 ガイエスブルグ要塞によるイゼルローン攻略戦ではケンプの副官として参戦、ケンプが要塞と共に散ったあと、自らも重症を負い9割の艦隊を失いながらオーディーンへ帰還した。ラインハルトはミュラーに対して叱責、謹慎を命じたが負傷していたこともあり厳罰は下していない。
 バーミリオン会戦では乗艦を三度も代えて旗艦を変更しながもラインハルトを守った。これ以降、難局に強く防御に秀でたとして「鉄壁ミュラー」の異名を取る。
 イゼルローン攻略戦、バーミリオン会戦とヤンと戦い、ヤンが暗殺された後、帝国代表ととしてイゼルローンを弔問している。この弔問に際して捕虜の交換をしているが、この辺りが、銀英伝の作品としての質の高いところ。事細かく歴史家の目で物語を追っている。
 彼は若い故か控えめで、ラインハルトからの元帥杖を一旦辞退している。ここらあたりがラインハルトとは大きく違うところ。しかしバーミリオン会戦での功績によりラインハルト戴冠後最初に完成した旗艦パーツィバルを賜っている。原作ではどうか知らないが、そのデザインちょっと首をかしげます。白鳥をイメージしているらしいのだが、もうちょい何とかならんか。僕は嫌いだな、あの形(参考サイト、アニメではもう少し幅の広い艦船だと思ったけれど)。
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2005年03月27日

ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ

 「銀河英雄伝説」の帝国側のキャラクター紹介もようやく終盤です。もう暫くおつきあいください。

 ヒルデガルドはマリーンドルフ伯爵の一人娘にして、後にラインハルトの妻、帝国カイザーリンになる女性。愛称ヒルダ。リップシュタット戦役でラインハルト陣営が有利であることを見抜き、父フランツ・フォン・マリーンドルフを説得してラインハルト側に付き、マリーンドルフ家を守る。最初は家系を守ることが目的であったようだが、戦役後はその見識と思慮深さが評価されてラインハルトの秘書官となる。キルヒアイスが亡くなった後は事実上ラインハルトの補佐官となっている。
 貴族の娘らしい品のある洋装でネッカチーフとブローチが魅力。登場の度にその結び方やブローチが違っているのはアニメながらなかなか細かい所にも設定が行き届いている。「神々の黄昏」作戦では中佐待遇で参加して軍服姿を見せる。
 バーミリオン会戦ではラインハルトの危機を察知「1個艦隊の武力にまさる」と言われる智謀の持ち主はミッターマイヤーとロイエンタールをを伴いハイネセンを急襲し制圧、アインハルトを救う。ここで双璧両提督を伴うことにした判断やラインハルトに叱責されることを承知での行動は見事。僕はオーベルシュタインの次に好きな人物だ。ただ冷徹オーベルシュタインとは異なり精神的に弱い面があったことで、ルビンスキーの画策にひっかかることとなる。
 リップシュタット戦役中、ブラウンシュヴァイク公が自領地ヴェスターランドの反乱に核を使おうとした時にラインハルトは核の行使を阻止しようとするが、オーベルシュタインは核を使わせて宣伝材料にするように進言する。迷うラインハルト。しかしオーベルシュタインは主君を欺いて核使用後に事後報告する。「オーベルシュタイン!」怒るラインハルト。ラインハルトが皇帝になったあとパレードでヴェスターランド市民の男から非難される。すくっと主君の前に立つオーベルシュタイン、「あれは私が進言したことだ」。
 しかしその夜、罪悪感にさいなまれるラインハルトは帰宅しようとするヒルデガルドに「帰らないでくれ、そばにいてくれ」と懇願する。ヒルダ「はい、お傍におります」。その夜、一夜を共にしたラインハルトとヒルダ。その一夜で帝国二代目皇帝を懐妊することになる。翌朝帰宅したヒルダにフランツは「あのふたり、うまくいったのだろうか」と独白している。この父親もかなり思慮深い男だ。
 第二部最後の場面、銀河を統一したラインハルトはヒルダに言った言葉がラインハルトらしく優しい。「わたしは心の狭い男だ。あなたに命を救ってもらったとわかっているのに、いま礼を言う気になれない。少し時間を貸してくれ。」何も言わずに安堵の表情を浮かべるヒルデガルドが可愛く見えた。
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2005年03月25日

アーダベルト・フォン・ファーレンフハイト

 ファーレンハイトは「銀河英雄伝説」でラインハルト麾下の上級大将中、艦隊戦で最初に命を落とした武将。アスターテ会戦ではラインハルト麾下で参戦、同盟軍と戦うが、リップシュタット戦役では門閥貴族側に着く。戦役後直ちに許されてラインハルト麾下に連なる。「閣下が帝国の軍権をにぎられたうえは、つつしんで従いましょう」。食うために軍人になったと言うだけあって、かなりしたたか。この後、キルヒアイスが殺され、「キルヒアイス提督を殺した犯人を捕らえるのだ」というオーベルシュタインの一言で全艦隊が帝都に向かう。この中にファーレンハイトの姿もあった。
 最後のイゼルローン攻略戦では前衛にいたビュッテンフェルトが乗せられて回廊に突っ込んだのを、後ろに控えていたファーレンハイトはビュッテンフェルトを抑えることができなかった責も感じてか救援に回廊に入る。戦況は不利で撤退しようとしたビュッテンフェルト艦隊とファーレンハイト艦隊が鉢合わせする様相になり、ビュッテンフェルトを退却させることはできたが、自らは命を落とす。
 こうして見てみると職業軍人というのは何に忠誠を誓っているのかと考えさせられる。傭兵のようにお金で敵にも味方にもなるというのは極端だが、ファーレンハイトは何に忠誠を誓っていたのか。ラインハルトと矛先を交えた人物が、リップシュタット戦役以降側近として登場する。憎しみから生まれた敵対心は変わることはないだろうが、時勢から生まれた敵対心は変わるということだろう。
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2005年03月23日

ヘルムート・レンネンカンプ

 「銀河英雄伝説」で最後は首を吊って果てた不遇の武将。ラインハルトの佐官時代の上官で、以前ご紹介した。リップシュタット戦役の後にラインハルト麾下に加わる。他の幕僚たちと並ぶと一人中年の雰囲気をかもしだす人物。ふくよかな体、色白の顔、口髭の人物で、イゼルローンでもヤンを攻めきれず、その後同盟領内へ侵攻しても判断ミスが目立ち、普段人を見下げた言動を吐かないヤンにも「ミスター・レンネンか」と軽口をたたかれてしまう。
 ハイネセン制圧後交わされた「バーラトの和約」の後、同盟領高等弁務官にラインハルトはロイエンタールを置こうとしたが、オーベルシュタインが反対、レンネンカンプが任命される。これが運のツキだったか。武将としては少々劣っていたが事務官としてはそれなりの実力はあったものと思う。ただ同盟領高等弁務官は余りにもレンネンカンプには荷が重過ぎたのだろう。ハイネセンが再び同盟に落ちた時にラインハルトへの申し開きができないという苦渋の末の自決であったと僕は信じている。他意なし、忠実な部下であった。艦橋でおろおろする姿が見られたが、大人の雰囲気をもつ人でもあった。亡くなってからはフレデリカにより化粧を施され、ヤンたちの脱出に遺体が利用された。自殺だったせいで葬儀は上級大将の割に質素。
 声を演じるのは渡部猛氏。本編では思ったほど登場していない。登場した回についてはよく喋っている方だが。
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2005年03月13日

コルネリアス・ルッツ

 銀河英雄伝説ラインハルト麾下の幕僚の内、一番の苦労人で報われなかった人。最期の場面が余りに悲しい。
 アムリッツァ会戦、リップシュタット戦役ではキルヒアイスの部下として働き、「神々の黄昏」作戦ではロイエンタールの副官としてイゼルローン要塞を攻撃。ヤンがイゼルローン要塞を放棄して去った後、そのまま要塞に残り要塞司令官となる。後にヤンがイゼルローンを奪還するが、その際に敵の陽動に乗ってしまい、更に要塞を奪取されてラインハルトに大目玉をくらうことに。確か謹慎の処分も受けていたように記憶しているが。その姿が実に惨めに見えた。
 さて物語後半にロイエンタールが高等弁務官としてハイネセンを治めた後、ルビンスキーが地下で暗躍する中、ラインハルトがブリュンヒルト単独航行で元同盟領へ行幸するが戦没者慰霊のため立ち寄った惑星ウルヴァシーで反乱が勃発。ラインハルト不在のままブリュンヒルトが一端離陸、銃弾の中を車を走らせラインハルトはブリュンヒルトと無事合流して脱出する。その際にルッツが一人残り、盾となってラインハルト脱出を助ける。無事ブリュンヒルトの離陸を見届けて倒れる。「戻って元帥杖を受け取れ」というラインハルトとの約束を果たせないまま戦死。目立った功績がなかったがこの最期で重要な役目を担った。
 ロイエンタール管轄下での反乱。もしロイエンタールが企てたのならもっと賢くやるはずで、それに気づかないほどラインハルトは熱くなっていたのか。
posted by KAZU at 10:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 銀河英雄伝説