2022年05月26日

「大怪獣のあとしまつ」(1)



 「大怪獣のあとしまつ」は2022年2月に松竹&東映から公開された“日本映画史に残る衝撃の空想特撮エンターテイメント”と冠する限りなくSF作品に近いギャグ作品。監督・脚本は三木聡、製作は須藤泰司・古久保宏子・中居雄太・山尾海彦、製作総指揮は吉田繁暁・木村光仁、音楽は上野耕路、撮影は高田陽幸、編集は富永孝、制作は東映東京撮影所、製作は「大怪獣のあとしまつ」製作委員会、上映時間115分。
 通常怪獣が登場する特撮作品では倒された怪獣の死体については描かれない。近年の怪獣映画では過去の作品で倒された怪獣の屍を利用したりする作品は存在しており、メカゴジラ、キングギドラ、などは屍から復活している。しかしそれらは海の底深くに沈んでいたり、既に骨格だけになっていたりと、単純に動物の死体としては扱っていない。かなり前のことになるが「ウルトラマン」(1967年)第29話「地底への挑戦」で科学特捜隊とウルトラマンに倒された黄金怪獣ゴルドンの死体から金が回収されて被害のあった地元に還元されたという話がナレーションにより語られる。「黄金怪獣ゴルドンの死体からは150トンの純金が取れた。科学特捜隊はゴルドンのために全滅した“むろお町”の復興資金としてその金を町に進呈したということである。」いずれにしても生き物の死体の処理の話は出てこない。


黄金怪獣ゴルドンの死体

 この作品が巨大生物遺体の処理を話の中心に据えていることは大変に興味深いことだと思う。私たちの生活の中で巨大生物の遺体の処理の話が持ち上がるのは、打ち上げられたあるいは座礁して死んだクジラの遺体。クジラの遺体だけでもその処理が大変なものであることは明らかで、腐敗臭、細菌の増殖、腐敗爆発等々がニュースになっている。まして80メートルもある大怪獣なら想像を絶する作業だろう。


★ストーリー



 関東に現われた大怪獣に自衛隊の通常兵器は全く歯が立たない。ところが突如現われた光に包まれて怪獣は絶命。この映画には大怪獣が生きている時の映像はありません。一級河川の上に横たわる死体から、映画はスタートを切ります。
 この死体の後始末をどうするのか。一級河川の上だから建設省?怪獣攻撃に多大なお金を使ったから防衛省が責任を取る?観光資源として死体を「希望」と名付けて画策する政府。一方で腐敗爆発の危険を含む巨大な死体。腐敗ガスの臭いを「銀杏の臭い」と表現する滑稽さ。ガスに含まれる謎の菌糸。豪華俳優陣がシリアス組とパフォーマンス組に分かれて演じる大エンターテイメントです。

主人公・帯刀アラタは自衛隊特務隊の隊員で、空を飛翔する光る物体に衝突して2年間行くえ不明となっていた経歴を持つ。政府は怪獣の遺体処理を総理大臣直轄の自衛隊特務に任せることになり、その責任者にアラタを指名する。調査に乗り出すアラタ。予想以上のスピードで腐る遺体は生物学的な視点から保存しようとする意見もあったが、それにも増して危険な状態になっていく。怪獣の体内で発生した腐敗ガスが充満して腐敗爆発の危険が出てくる。アラタはダムを爆破してその水流で遺体を海へ流そうとする。ダム爆破には成功し、水で冷却することにより一旦腐敗爆発を避けることには成功したが、水量が足らず怪獣の遺体は依然地上に残っていた。
 東京町工場の社長・八見雲登が提案したガスを成層圏まで巻き上げてしまう提案に、アラタの元カノ・雨音ユキノの夫、総理の秘書官である雨音正彦は、ロケット弾を用いて実行に移す。しかし、その不正確さに懸念を抱くアラタは自ら怪獣の遺体に取りついて穿孔しガスの排出口を作っていくのだが…。作業の最中にとうとうロケット弾が着弾してしまい、遺体から落下するアラタ。アラタはこの作戦が終わったら全てを話すと言っていたユキノの目の前で、光の巨人に変身して怪獣の遺体を持ち上げると、宇宙へ向かって飛んで行く。彼女の最後のセリフ「ご武運を」が頭からはなれません。ここでこのセリフか?
 作品の冒頭で雨音正彦は総理の机の上に「deus ex machina」と書かれたメモを見かける。総理から立ち入ってはいけない情報には目をつぶるように諭されるのだが、正彦は怪獣が突如現われた光に覆われ、胸に致命傷を負った子細を調査し、結果アラタの正体を予見するような言動を発する。「deus ex machina」(デウス・エクス・マキナ)絶対的なあるいは超越した力の存在が混乱を一掃して事態を解決して物語を収束させる。結末は最初から暗示されていたわけです。
 ハッピーエンドならそれでいいと思う反面、真剣に見ていた人、おそらくこの作品を100%真剣に見ている人はいないでしょうが、その人にとっては超落胆する結末でした。ちなみに私は肯定派ですよ。
posted by KAZU at 12:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 特撮
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