
新海監督の作品らしく、背景は実際の景色を参考に描かれているところが多いようですが、確かに最後に瀧と三葉はお互いを探し回る東京の街中は実にリアル。同じ道を逆方向からも描く。現実でも逆方向だと違って見えます。あれは想像では描けないところでしょうね。そういう背景の他にも細かいところに思いがこもっているように感じます。一番印象的なのは月。三葉の暮らす時間と瀧の暮らす時間は三年という時間のズレがあるわけですから、同時に見る月は位相が違って当然。違った位相の月が何度も描かれているのは月に何かを込めているとしか思えません。謎解きをするには何度も見ないといけませんね。
瀧が三葉のいた時間がズレていることを知るのは糸守が隕石の落下で消滅したことを知った時ですが、それまでに本人達が知るであろう要素は劇中にもたくさんありました。それでもそれを視聴者にも感じさせない演出が見事です。三葉がブラックアウトする瞬間まで僕も気づきませんでした。
新海監督が描く恋物語は悲しい恋が多くて、普通に成就することはなくて。どうしようもない時間の流れの「ほしのこえ」。絶望の一歩手前の「雲のむこう、約束の場所」。「秒速5センチメートル」のような“すれちがい”結末を迎えるのかなと、最後まで不安で仕方がなかったけれど、今回はやってくれました。先はご想像におまかせします、というようなエンディングでしたけど。

「秒速5センチメートル」から
冒頭の部分は実はかなり感動的な映像がぎっしりと詰まっているのですが、それは当然気づきません。最後まで見て、もう一度最初から見た時にその意味が全てわかる。この作品は繰り返して見るごとに新しい発見がある作品だと思います。