
ある日、突如東京を中心に霧が発生する。時季外れの霧を訝しげに眺める内に電気、ガス、水道が止まる。東京は厚い雲に覆われてしまい外部と遮断される。東京に戻ろうとしていた北斗電機の技術開発部長・朝倉と学生時代の友人で航空自衛隊二等空佐・佐久間、テレビキャスター・小出まり子は同じ新幹線に乗り合わせており、同行することに。北斗電機の技術顧問で筑波大学電子工学教授の大田原は雲の正体を解明するため調査に乗り出す。一方政治の核を失った日本に対し、アメリカ・ソ連の戦略的動きが始まる。大阪府知事を中心に全国知事会が臨時政府の樹立に動く。前半は原作に近い形で淡々とそれぞれの人物が個々の職務を全うする様を描いていく。

後半は雲に閉じ込められた人々を助けようと懸命に動く人々を人間ドラマで描く場面が強調される。東京が雲で遮断された後は一切中の様子は描かれることはない。外からの調査の結果と憶測だけで話は進む。政治的には国連の安全保証理事会にアメリカから日本の信託統治案が提出された時点で中田代議士が臨時政府の樹立を決意するが、事がなされる前に雲が消失して物語は終わりを迎える。
この作品の残念なところは雲の正体が何であったかということが明らかにされていない点だが、後半のヒューマンドラマはそれを帳消しにしてしまう程に素晴らしいと思う。

