2016年08月02日

「ガス人間第一号」(2)


岡本警部補と東都新報の記者・京子

★ストーリー
 大学を卒業した水野は航空自衛隊を志願、パイロットを夢見るが叶わず、図書館に就職する。ある日、佐野久伍博士が訪ねてきて、「人体を細胞から改造すればパイロットはおろか宇宙飛行士にさえなれる。」と月給2万円で実験への協力を求めてくる。大学卒の初任給が1万円に達しない時代の話、高額ではなく微妙な金額。金の魅力もあり水野は日曜日に博士を訪ねる。求められるままに注射を打たれ、実験装置に入った水野は240時間の睡眠の後に体が気体になってしまう。博士にとっても想定外の結果で、水野の詰問に以前から人体実験を繰り返していたことを漏らしてしまい、水野に殺される。水野は精神統一により自分の体を肉体にしたり気体にしたりする能力を身につける。
 物語は東京で不可解な銀行強盗事件が起こるところから始まる。犯人を追う警部補の岡本を乗せたパトカーは犯人が奪って逃げた銀行の車を追跡するが、その車が転落事故を起こす。ところが犯人は忽然と消えてしまっていた。すぐ近くに日本舞踊春日流の家元・藤千代の屋敷があったが結局犯人を見つけることはできなかった。
 ところが零落した春日流家元が突然金回りが良くなる。藤千代は春日流本家の発表会を行うために奔走、お金を使って本家から離れた流派の参加を取り付けていく。一方、警察も藤千代の身辺を洗いはじめ、とうとう銀行がチェックした札の番号を屋敷の中で発見して、藤千代を逮捕する。そんな中、警察に真犯人を名乗る水野が現れ、藤千代の無実を訴え自らは逮捕される。警察の取り調べに「実際に手口をお見せしましょう」と現場検証でガス化して手口を晒した上で逃亡してしまう。水野は愛する藤千代のために銀行強盗をしてお金を貢いでいたのだった。ガス人間を逮捕する策は警察にはなく、藤千代を釈放して協力を求めるのだった。
 警察は田宮博士に協力を仰ぎ無毒性引火ガス・UMガスを使って水野を焼却抹殺する作戦を立てる。藤千代は発表会を予定通り行い、水野は鑑賞にやってくる。田端警部は苦渋の決断で藤千代、老鼓師共々爆発させるとスイッチを入れるが点火しない。舞いを終えた藤千代と水野が抱擁する中、藤千代は静かにライターを着火する。ホールは大爆発を起こす。ホール入り口に藤千代の着物を纏った瀕死ガス人間が現れ、肉体化してこと切れるのだった。
posted by KAZU at 20:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 特撮

「ガス人間第一号」(1)



 「ガス人間第一号」は1960年に東宝より公開された劇場版特撮映画。“変身人間シリーズ”の中で唯一未鑑賞だったが、ようやく見ることができた。製作は田中友幸、原作はジョン・メレディス・ルーカス著「ガス人間」、脚本は木村武、音楽に宮内國郎、特技監督に円谷英二、監督は本多猪四郎。
 非常に完成度が高くて、昭和30年代の作品でありながら、強引なつじつま合わせや無理なストーリー展開は全くなく質も高い。唯一違和感があったのはガス人間を作った佐野久伍博士が水野を押し込んだ実験設備。その直前の映像はいかにも昭和30年代の化学実験室という感じだったが、部屋をひとつ奥に入って出てきたのがいかにも張りぼてに見える設備だった。
 今の邦画は大半がクレジットはエンディング、エンドロールだが、本作のようにプロローグ、タイトルコール、オープニングで、クレジットが流れるのは古臭さを感じるものの、正統派のような気がする。そしてオープニングを含めてその音楽は宮内國郎が担当。私たちの年代なら「うわっ、ウルトラQ」と思ってしまう。本作のBGMが後に「ウルトラQ」や「ウルトラマン」に流用されたいうことで、こちらがオリジナルだ。「ウルトラQ」のあの回あの場面に流れた曲がいっぱい。「ガラダマ」のダムの遊覧船のラジオから流れる曲も。
posted by KAZU at 01:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 特撮