
「銀河英雄伝説・外伝」の1エピソード。外伝の中でもラインハルトが中佐で巡航艦の艦長という艦隊を率いる前、16歳のエピソード。
駆逐艦で巡航艦を撃沈した武勲により中佐に昇進したラインハルトは巡航艦ヘーシュリッヒ・エンチェンの艦長に就任したが、キルヒアイスは中尉にとどまったために、副長に就けることができなかった。軍人事に従ってもともとその任にあったワーレン少佐が副長、キルヒアイスは保安主任として艦長を守るために傍らにあるということで、ラインハルトはヨシとした、と冒頭で述べられている。
ワーレンがラインハルトの幕僚として活躍するのはずっと後、ラインハルトが戴冠した後のことになるので、若き日のワーレンが描かれているのはこの外伝の1エピソードだけではないかと思う。また後の幕僚であるヘルムート・レンネンカンプ大佐がラインハルトの上司として登場。姿は見せないがフェザーンの駐在武官としてミュラー、補給艦の艦長としてアイゼナッハが登場している。
ワーレンは年少のラインハルトやキルヒアイスに対して全く偏見はなく、軍務に忠実な常識的な軍人として描かれており、その人柄がよく出ていると思う。
さて、目立った武勲をあげるような出撃もないまま艦長就任から6か月が経った時、レンネンカンプ大佐を通じて、アーベントロート少将よりラインハルト指名で極秘任務の要請がある。ヘルクスハイマー伯爵が軍事機密を奪ってそれを手土産に同盟に亡命するためにフェザーン回廊と通って脱出しようとしているのを阻止せよとのこと。巡航艦一隻で支援なしの任務故に困難を極めることを承知でラインハルトは拝命する。
作戦の協力者という名目で同行したアーベントロート少将の部下ベンドリング少佐を載せ、訓練航行と偽ってイゼルローン要塞を出航したヘーシュリッヒ・エンチェンが回廊の同盟側出口にさしかかった時、部下を集めて本当の目的を話す。「回廊といえども、蟻一匹這い出る隙もないわけではない」「なければ作ればいい」とラインハルトは敢えて詳しく説明せずに艦を進める。
最初の見どころは回廊を脱出する際の陽動作戦。敵のパトロール艇を味方の警備艦隊のところへ引き込み、敵の周波数で救難信号を発して敵の目を戦闘空域に集中させている間に回廊を抜けて同盟側へ侵入する。「この艦長、若いがただ者ではない」とワーレンが感心する場面が印象的だ。
フェザーン駐在武官との通信空域でヘルクスハイマーが既にフェザーンを出航した旨の通信を受けたラインハルトは航跡からその船を割り出し追跡、奇襲攻撃を欠けて護衛艦を撃破、船のコントロールを奪取するも、脱出しようとしたヘルクスハイマーは減圧事故で死亡。唯一令嬢・マルガレータのみの生存を確認する。持ち出された軍事機密は指向性ゼッフル粒子の発生装置の試作品と宮廷闘争にかかわる重大な機密文書。ベンドリング少佐は内容は知らされていないもののこの機密文書を奪還することを密命されていた。しかしアクセスコードがなければ装置の移設も文書の閲覧もできない状態で帰途に着く。
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