
「千年女優」は2002年にクロックワークスの配給で公開された劇場版アニメ作品。原案は今敏、脚本は村井さだゆき・今敏、音楽は平沢進、制作はジェンコ、マッドハウス、製作は「千年女優」製作委員会(角川書店、WOWOW、クロックワークス、バンダイビジュアル、ジェンコ)、カラー、90分。
2003年に数々の賞を受賞した今敏監督のアニメ作品。僕は「パプリカ」で初めて今敏監督の作品に触れましたが、表現、描写手法は独特です。最初地球を臨む月とおぼしき星から宇宙ロケットが出発するシーン、「えっ?」と度肝を抜かれます。
映画会社「銀映」の古い撮影書が解体されることになり、元銀の社員であり、藤原千代子のファンである立花源也はカメラマンの井田恭二と共に千代子の自宅にインタビュー取材に行く。芸能界を引退して隠棲していた千代子はずっと取材を拒んでいたのだが、預かっていた「鍵」を返すという立花の取材を快諾する。鍵を受け取った千代子に立花は問う。「大事なものだったのでは?」。千代子はつぶやくように答える。
「一番大切なものを開ける鍵」
そして自分の過去を語り始める。物語は過去と現在、更には未来をも巻き込んで、現実と映画の中の役柄が入り乱れて進みます。そして作品の最後の場面は、冒頭の宇宙ロケット発射のシーンへつながり、台詞もまた繋がって輪廻転生を思わせる壮大なスケールを感じさせる仕上がりになっています。半分見ても、八割見ても、九割見てもよく分からないのに、最後まで見ると頭に繋がって疑問が解ける仕組みになっているんですね。詳細のレビューを書いても余り意味がないと思うので是非興味を持たれた方は鑑賞することをお勧めします。
ただ残酷なのは、千代子が“いつかきっと”会いたいと思っていた画家“鍵の君”がとうの昔に亡くなっていたことが作中で語られます。作品主題はそこではなく、千代子の台詞「「だって、あたしは、あの人を追いかけるあたしが、好きなんだもの」の方にあるのですけれど。顔が登場しない“鍵の君”の声は山寺宏一さん、カッコイイ。
☆キャラクター&キャスト
・藤原千代子/荘司美代子(老年)、小山茉美(壮年)、折笠富美子(少女期、青年)
銀映の大女優。30年前に若くして引退して隠棲している。
・立花源也/佐藤政道(青年)、飯塚昭三(現在)
スタジオロータス社長。元銀映のスタッフで千代子のファン。
・井田恭二/小野坂昌也
スタジオロータスのカメラマン。
・島尾詠子/津田匠子
銀映の元看板女優。
・大滝諄一/鈴置洋孝
銀映の監督、後の千代子の夫。
・鍵の君/山寺宏一
画家。思想犯として追われているところを千代子に助けられる。
・傷の男/津嘉山正種
憲兵として“鍵の君”を追い、後に拷問により殺したことが語られる。
・銀映専務/徳丸完
千代子をスカウトして、彼女が女優となるきっかけを作った人。
・千代子の母/京田尚子
☆主題歌
エンドロールで流れた曲は「ロタティオン[LOTUS-2]」。音楽担当の平沢進が自ら作詞、作曲、編曲している。本編から継ぎ目なく流れ始めるこの曲はちょっとレトロな雰囲気を持つ不思議な曲。一度聞いたら耳から離れない魅力がある。アルバム「賢者のプロペラ」に収録。
