2007年08月18日

チンク



 天上で神様は、地上に生を受ける子どもたちが男の子になるか女の子になるかを決めていました。男の子になる子には青いハートを、女の子になる子には赤いハートを飲ませるのでした。一列にならんで神様の選択を待つ子どもたち。その子の順番が回ってきました。
「君は女の子になるんじゃよ」
 神様は赤いハートを飲ませたのですが、
「もう青いのを飲んだよ」
 天上一のいたずら天使が先に青いハートを飲ませてしまっていたのです。
「こらっ!チンク!」
 怒り心頭の神様は天使チンクを捕まえて言いました。
「地上へ降りてあの子から男の子の魂を回収して来い!」
 一方、地上で生を受けたその子はとある王国の姫として生まれました。ところがその国では男しか王国を継ぐことができず、世継ぎを待ち望んでいた国王と王妃、その側近達は「男の子が生まれた」と国民に知らせ、サファイアと名づけられた姫を男の子として育てるのでした。そしてその秘密が守られたまま育ったサファイア姫の前に神の命令を受けた天使が小さい子供の姿を借りて現れるのです。
 手塚治虫の名作「リボンの騎士」の主人公シルバーランドのサファイア姫誕生のエピソードです。サファイアの数奇な運命の発端がチンクのいたずらから始まったということですが、物語の中心はチンクがサファイアから男の子の魂を取り戻すことではなく、別のところにあるのはご覧になった方には明白なことだと思います。
 初めてサファイアに会ったチンクは「君は女の子だ」と言い当て、サファイアは「男の子だ!」と言い返します。「女の子だ」「男の子だ」「女の子だ」・・・「どうして知ってるの?」。チンクはシルバーランドの今の状況とサファイアの立場を理解して魂を抜き取ることを待つことにします。余りにチンクの帰りが遅いことで天馬(ペガサス)がやってきて強引にサファイアから男の子の魂を奪い返そうとした時もチンクはサファイアの味方をして天馬を押しとどめます。そして最終回、「シルバーランドが本当に平和になるまで、リボンの騎士が必要なくなるまで」というサファイアの願いを聞き入れて、最後までチンクはその使命を果たしませんでした。
 その中途半端な行為は僕は見ていて腹が立つくらい嫌いです。最後はフランツ王子と結婚したサファイアから男の子の魂を奪って天上に帰っていくチンクを描くべきだと思うのです。手塚治虫はそうしなかったのですが、実に魅力的なサブキャラクターだとは思いませんか、堕天使チンク。
posted by KAZU at 06:30| Comment(0) | TrackBack(0) | アニメーション