「ウルトラマンティガ」の「花」をご紹介したならば、もうひとつ忘れてはいけないのがこの「夢」でしょうか。「ティガ」で実相寺昭雄監督が撮ったもう一本の作品。制作事情には疎いのですが、原案は実相寺監督。夢幻怪獣バクゴン登場の作品。この作品も怪獣とティガとの戦いはストーリーの流れのほんの一コマに過ぎず、コミカルな人間ドラマが描かれる。30分ものであるウルトラシリーズとしてはゲストキャストが多い。ティガは余り活躍しません。
不実な恋人トモコに別れを告げられた青年イクタカズマはそのショックから立ち直ることができない。図面を描く仕事をしているのだが、図面にはトモコトモコトモコトモコ・・・とトモコの名を書き続ける始末。そして夢の中で自分が怪獣になって暴れまわる。偶然、宇宙線モルフェウスDがイクタの住む地区に降り注ぐ。この宇宙線は特殊な波長の脳波を具現化する力があるのだが、これまた偶然にもイクタの脳波がその特殊な波長に一致したために、イクタの夢の怪獣バクゴンが現実の世界に現れる。ところが実体のない怪獣にGUTSの攻撃もティガの攻撃もすり抜けてしまう。
話はそれるが「ウルトラマン」の第15話「恐怖の宇宙線」では特殊な宇宙線が二次元のものを三次元化する性質があり、ムシバ(子供)の描いた絵が怪獣ガヴァドンとして現れたわけなのだが、この時イデ隊員は「夜の間に絵を消したらどうですか」とムラマツキャップに提案している。対してムラマツキャップは「科学特捜隊がそんなことできるか」と一蹴しているが、これほど楽な怪獣退治はないかと思うのだが。
イクタの夢の作り出す怪獣はガヴァドン程退治は楽ではない。夢に悩むイクタは医者の勧めでセラピストの元へ赴くのだが、治療費をボラれるばかりで解決しない。トモコが婚約者と引っ越したという話を聞いたイクタの夢は恨みが募ってバクゴンも凶暴化する。GUTSは脳波探知機を使って夢の根源である人物を捜索する。実体のない怪獣に対して手も足もでないダイゴは戦線を離脱(ホリイ隊員言うところの敵前逃亡)を図り、静かな場所で眠り夢の中でティガに変身する。そして同じ夢の世界に入ったティガはバクゴンを倒すことに成功する。イクタの身柄を確保したムナカタはデカ長になりきっていた。「夢くらい見させてくださいよ」と言うイクタが哀れ。敵前逃亡したダイゴにイルマ隊長はおかんむりで、ダイゴに出頭命令を・・・。
実相寺監督の作品ということでお約束通りエンディングナレーションが付いている。「人は誰しも夢を見る。夢に逃れ、夢に遊ぶ。なぜって、うつつよりも、夢にこそ確かな世界が広がっているからだ。」
ゲストキャストはイクタカズマ/角田英介、元イクタの恋人トモコ/大家由祐子、セラピストのドクトルチヒロ/嶋田久作、イクタの上司・宮川/寺田農、トモコの新恋人カルロス/青島健介、茶髪の若い男/浅野忠信、アパートの女/吉行由実。