「雲のむこう 約束の場所」は
「ほしのこえ」でその名を馳せた新海誠氏が原作・脚本・監督を手がけて作り上げたSFアニメ。たったひとりで作り上げた「ほしのこえ」は以前にご紹介したとおり数々の賞を受賞した短編アニメ作品史上屈指の名作。さすがにこの作品を超えたとは言い難いが、「雲のむこう、約束の場所」もすばらしい出来ばえだと思う。音楽に天門、作画監督に田澤潮、美術に丹治匠。2004年、本編91分、コミックス・ウェーブ製作・配給。
新海監督独特の私達の住む世界とは違うが酷似した異世界を舞台にしているということと、90分という長編で時系列どおりに話が進まないところがあり、スト−リーの全容をつかむのに2/3を見ないといけない。そういう意味では少々冗長、分かり辛い展開となっている。これが唯一のマイナスポイントかな。後、僕としては根本的な謎解き、サユリの眠りとユニオンの塔の因果関係を述べていないことは大いに不満だ。長編にするならこういうところも描き切って欲しいと思う。
舞台は津軽海峡で南北が分断された日本。アメリカ統治下の南日本、青森の中学生2年生の藤沢浩紀(ヒロキ)と白川拓也(タクヤ)はユニオン占領下のエゾに立つ巨大な塔を見たさに小型飛行機を組み立てていた。ヒロキとタクヤは飛行機作りをサポートしてくれている岡部製作所でアルバイトして部品代を稼いでいた。タクヤは町へ出た時にヒロキの憧れる同級生の沢渡佐由理に会い、帰りの電車の中で二人の秘密を喋ってしまったことから、飛行機作りを見学することに。白い翼の飛行機を見たサユリは感激し、三人で雲のむこうの塔に飛ぶことを約束する。こうして三人の時間が始まったのだが、三年の夏突然サユリがいなくなり、小型飛行機ヴェラシーラは完成されないままになってしまう。ヒロキは東京の高校へ、タクヤは青森の高校へ進学して違う道へ進む。3年後、サユリがいなくなった虚脱感をぬぐい切れないヒロキはサユリの夢を見るようになる。その夢に引かれるように故郷を訪れ、中学の教室でサユリの存在を強く感じ再びヴェルシーラを完成させようとする。